最近ネコノミクスと呼ばれる、猫需要の拡大がメディアによってさかんに紹介されている。なんでも、ここ数十年のうちに犬を飼う家庭は減っていく一方、猫を飼う家庭が増え続けているというのだ。
テレビでは「猫は犬とちがって散歩に行く必要もなく、手が掛からない」といい、猫の飼育を視聴者に勧めている。ああいう特集を見ていると「おいおい待ってくれ」と言いたくなる。
大前提として、ペットを迎え入れるということは、家族が増えるということだ。家族を家に新しく招き入れるときに、「手間がかからない家族がいいなぁ」と思う人が、果たして正常だろうか?
僕はそうは思わない。
猫は手がかかる!金もかかる!
テレビの影響力は割と馬鹿にならない。ネコノミクスなる一時の特需にほだされる形で、知識のない人まで猫を飼おうとしている傾向が見られる。
しかし、大前提として猫を安心、安全な環境で飼育するには、家の中をしっかり整頓する必要があるし、トイレなどの設置、消耗品や餌のストックは欠かせない。
それに、散歩に出す必要がないということは、犬が散歩にエネルギーを費やすのに対し、猫は自分勝手に、好きな時に好きなタイミングで大暴れしてエネルギーを発散する。
たとえ深夜だろうといつだろうと、猫が暴れたいという欲求を爆発させる時間帯は、毎日必ず訪れる。言いようによっては、犬の方がよほど飼いやすい。この点についてもしっかり理解していないまま、気軽に猫をペットにしようなどとは思わないでおきたい。
生後半年ほどすれば去勢することを視野に入れるべきだ。病院にもよるが、去勢費用は10,000円以上することがほとんどである。猫にも健康な子もいれば、病気がちな子もいる。
場合によっては、家に迎え入れて半年以内に、100,000円ほどは使うこととなってしまう。
飼い主の家事、仕事を邪魔するのが猫の仕事
かく言う僕も、これまで何頭もの猫と暮らしてきた。現在は、オスの白猫が家にいるが、この子は最寄の駅前で捨てられていた猫だ。いっしょにもう1頭捨てられていたが、夏場だったこともあり、既に死んでいた。
息も絶え絶えだった生き残りだったが、幸いにもその後持ち直し、今でも気管に疾患があるものの、元気に走り回っている。というか今まさに、僕の原稿執筆を邪魔している。だけどこれにいちいち怒ってはならないのだ(涙)
猫にとっては遊ぶことが大事な仕事。家事をしている飼い主にちょっかいを出すこともあるし、仕事中の飼い主の膝の上で甘えることもある。これは猫にとっては当たり前の行動であるし、猫を飼うとは、こういう行動も受け入れる必要があるということだ。
猫と暮らすことに気軽さを求めると失敗する!
手がかからないなんて、思わないほうがいい。性格や年齢にもよるが、大抵の猫は毎日のように、考えられないイタズラをやってのける。また、20年近く生きる猫も珍しくない。
それなのに年老いた夫婦が寂しさを埋めるために飼い始めるケースも問題になっている。飼い主のいなくなった猫は、大切にされていればされているだけ、他の環境に慣れることが難しいし、最悪、引き取り手がいなければ処分対象となる。
自分のために猫を飼うという発想は、結果的に自分と猫を不幸にする。安直な気持ちでは家族に迎え入れてはならないということを、よくよく考えておく必要がある。
こういう覚悟は、本来ペットを飼う以上は誰もが胸に刻んでおくべきものだろう。
(文/松本ミゾレ)