ブラック企業に苦しめられている労働者は少なくない。
厚生労働省が平成25年に行った、若者の使い捨てが疑われる5,111の企業に対して実施した「過重労働重点監督」調査によると、全体の82%にあたる4,189事業場が、何らかの労働基準関係法令に違反していたことが明らかになっている。
疑わしい企業を対象に行う調査ですらこれなのだ。上手く監視の目をやり過ごしつつ、上層部だけが私腹を肥やしている企業などは、全国各地にまだまだ隠れているに違いない。
筆者の知人が自殺した。その理由は……
さて、今から5年も前の話だ。高校の同級生だった、Iという男が死んだ。自殺だった。
学生時代には一緒に遊ぶこともあったし、それなりに仲良くしていたIだったが、たしか20代の前半には結婚をして子供もいた。一方で実の両親との折り合いは悪く、まさに自分1人が一家の大黒柱として奮闘していた。
Iの自死については、その遺書の内容を見れば一目瞭然。原因は、当時の勤務先だったようだ。さすがに全文までは読んでいないものの、自死の理由として、僕はその記述を目にしたことがある。
Iを追い詰めていたのは、勤務先で常態化していた罰金制度だった。たとえば遅刻すると1,000円を給料から天引きされるとか、会議で発言しなかったら給料が減るとか、おおよそそういう感じの制度になっていた。
労働基準法を完全に無視した、おかしな制度である。
誰にも相談できず、追い詰められた男
僕だったら弁護士に相談をするか、親しい友人、あるいは家族に助けを求めていたことだろう。
ところがIは元々両親と不仲。結婚して地元を出て、汗みずくで働いていたため、友人とも疎遠になっていた。育児に奔走する奥さんにも負担をかけたくないと思っていたのだろう。一切弱音を吐くことはなかった。
そのIの気丈さに付けこんだ勤務先の連中は、次第にピンポイントにIから罰金を徴収するようなルールを押し付けた。
様々な粗探しをされ、最終的には300万円もの、支払う理由のない借金を抱えてしまった。進退窮まったIは、とうとう最悪の決断をしてしまったのである。
どうして相談してくれなかったのかと、今さら僕らが嘆いても遅い。相談もできないほど、当時のIは極限まで追い詰められていたのだろう。
件のブラック企業は、このときの騒動の元凶として糾弾されて、今は影も形もない。経営者家族は夜逃げしたとも、一家心中をしたともいわれてる。
罰金制度は悪しきブラックの伝統なのか?
ところで、罰金制を導入しているブラックが案外多いようだ。
ちょっと調べただけでも、たとえばある地方の有名な広告代理店では、遅刻すると罰金が発生するという。その徴収額は、1分100円。1時間遅刻すれば6,000円となる。これは馬鹿げた金額だ。
集めた罰金は、飲み会の足しになるだの、上司の懐に入るだの言われている。異常だ。
また、僕が以前取材したサラリーマンの勤める会社では、あいさつの声が小さいと罰金、とするルールが課せられていた。これはかなり陰湿なもので、朝礼のあいさつの声が一番小さいと思った人物を、その場にいる全員が指名するというのだ。まるで魔女裁判のような雰囲気だ。
必然と、いじめのような雰囲気が生じていき、社内の雰囲気は常にジメジメしていたという。
そもそも罰金を強いる企業など、労働者を舐め腐っているブラック企業だ。しかし、個人的には「よくも今の時世に呑気にこんなことやっていられるな」と思わずにはいられない。
いずれブラック企業は破滅するであろう
ここまでインターネットが身近になっているのに、自社のブラックな実情を、関係者が暴露しないはずがないのだ。暴露はやがて口コミに影響し、ブラック企業がいくら否定しようと、その真贋を大勢の目の前に晒す羽目になる。
ブラック企業などという物がこれからの時代、安穏と経営を続けていけるはずはない。
(文/松本ミゾレ)