最近、専業主婦を希望する女性が増えています。「ブラック企業で働くぐらいなら専業主婦の方がいい」とのことですが、もっともな理由です。
しかし、夫の収入が日本人の平均である400万円だった場合、妻は専業主婦になることは可能なのでしょうか?様々な側面から考察してみました。
専業主婦のメリット
専業主婦は言うまでもなく無収入です。それまで続けていた仕事を手放すには、それなりの覚悟も必要です。それでも自分を納得させるのならば、専業主婦のメリットについて理解するのも一つの方法ではないでしょうか。
配偶者控除
専業主婦のメリットとしては、まず税制面での優遇があげられます。
専業主婦または年収103万円以下しかない妻の夫は、所得税と住民税を計算する際に配偶者控除を受けることができるのです。年収400万円ならば年間5万円程度税金が安くなります。
家計簿を見直して節約する
共働きをしていると、収入は十分でもどうしても家事等に費やすことができる時間は少なくなるため、どうしてもどんぶり勘定の家計になりがちです。
しかし、専業主婦になれば家計簿をつけ、家計を見直す時間もできるでしょう。節約を心がけるようになったことで、共働き時代の無駄に驚く人も少なくありません。
いざとなれば働ける
夫の年収400万円だけではどうしても立ち行かなくなることもあるかもしれません。そんな時には、専業主婦はいつでも働くこともできます。
短時間パートは家事とのバランスがとりやすいため、生活サイクルに最適な働き方で収入が得られるでしょう。働きたいと思った時に仕事に復帰することは、十分可能なのです。
専業主婦のデメリット
一方、専業主婦には様々なデメリットがあるのも事実です。専業主婦になるにあたっては、デメリットについても正しく理解しておくことをおすすめします。
金銭的余裕がない
収入源が一つ(シングルインカム)になってしまうと、どうしても金銭的な余裕はなくなります。
二人とも働いていた時の感覚でざっくりとお金を使っていては、いずれ破綻してしまうことは目に見えています。
年収400万円で妻が専業主婦になった場合、節約して生活しなければ厳しいというのは歴然とした事実なのです。
家事の手抜きがしにくい
働いていた頃は、家事に多少の抜けがあっても仕事のせいにすることもできたでしょう。しかし、一日中家にいるとなると、家事の手抜きはどうしてもしにくいものです。
仕事を言い訳にできない分、家事の質を求められることになるでしょうし、それに応え続けるのも案外大変なもの。
家族に分からないように適度に手を抜くのも、自分を追い込まないコツです。
介護やPTA役員などを任されやすい
専業主婦は、当然のように介護やPTA役員を任されることが多々あります。いずれも、下手をしたら仕事以上にいろいろな人と折衝しなければいけない大変な務めです。
身体を壊すまで頑張ってしまう人もいますが、自分ができること・できないことのラインをしっかりと引いて、時には断る勇気も必要です。
「専業主婦のクセにやらないなんて怠けてる」などという安易な意見はそもそも間違いですし、そういったことを軽々しく口にする人ほど自分は何の働きもしていないことが多いので、気にしないようにしましょう。
生活形態に合わせて保険の見直しを
収入がない専業主婦の保険はどのようなものが適切か悩む方も多いかと思います。
「貯金を含めて保障内容が自分と家族にとって最適なものを選べているのか」と漠然と不安に感じている方もいますよね?
子育て家計だからと言って特別必要な保障はよっぽどでない限り存在はしませんが、医療保障や教育関連の保障内容はもう一度見直しておくことが重要です。
更に、出産や子供の成長により生活形態が大きく変わってきますので、それぞれの段階で過不足のない保険を選ぶのが得策です。
つまり多くの家庭は、「将来の貯金」「保障内容」「保険料」の観点からもう一度保険を見直すべきであることは間違えありません。
年収400万円・子ども1人の家計簿
それでは、年収400万円、妻は専業主婦、子どもは1人という家庭の家計簿がどうなっているのか見てみましょう。
手取り月給26万円、ボーナス27万円が年に2回というAさんですが、毎月の大きな出費としては
- 住宅ローン:65,000円
- 自動車ローン:47,500円
などがあります。その他、
- 光熱費:18,200円
- 通信費:10,400円
- 食費:41,600円
- 日用品:10,400円
- 夫婦の小遣い:26,000円
- 保険:13,000円
- 趣味・レジャー費:7,800円
- 被服:5,200円
- 交際費:5,200円
- 貯蓄:30,000円
になっています。子ども1人ならば貯蓄する余裕があることがわかります。
年収400万円・子ども2人の家計簿
年収400万と一口にいっても月給とボーナスの配分は異なります。たとえば、手取り月給24万円、ボーナス35万円が年に2回のBさんも年収は約400万円になる計算です。
では、もしも、Bさんに子どもが2人いた場合には家計簿はどうなるのでしょうか。
Bさんは賃貸物件に住んでいて、
- 家賃:60,000円
- 自動車ローン:45,000円
が毎月の大きな出費です。その他、
- 光熱費:16,800円
- 通信費:9,600円
- 食費:38,400円
- 日用品:9,600円
- 夫婦の小遣い:24,000円
- 保険:12,000円
- 趣味・レジャー費:7,200円
- 被服:4,800円
- 交際費:4,800円
などが毎月かかっていますが、いずれも子ども1人のAさんよりも節約している様子です。それにもかかわらずなかなか貯金できないという状況にあります。
家計管理をしよう
以上のように年収400万円のまま専業主婦でいるためには、しっかりと家計を管理することがマストです。
子どもが幼稚園に入るなどして社会生活を営むようになると「Cちゃんがスイミングをしているならば、うちも」などと、お付き合いのからんだ習い事を始めたくもなるものです。しかし、そのようにお付き合いを続けていては、家計はすぐに破綻してしまいます。
「うちはうち、よそはよそ」と、割り切ることも大事なのです。
また、どうしても専業主婦になりたいならば、働いているうちにしっかりと貯蓄習慣を見に付けておきましょう。社内預金、財形貯蓄、先取り貯蓄など、どれか一つでもかまわないので、結婚前にできるだけ貯金しておくようにしたいところです。
個人年金保険、医療費控除等の還付金の種類、株式投資や投資信託、NISA口座のメリットとデメリットなどの知識も深めておけば、さらに心強いでしょう。利殖能力のある専業主婦になれば、家にいても収入を得ることもできるのです。
夫だけではなく妻の分もお小遣い制にするというのも、ぜひ取り入れて欲しいチャレンジです。
専業主婦は自分の買物を雑費、日用品扱いにして家計簿に記入してしまいがちですが、そうするとどうしても余計なものを買い込む習慣を作ってしまいがちです。
家計の使途不明金をなくし貯蓄額を増やすためにも、あえて自分にもお小遣い制を導入するというのは非常におすすめです。
まとめ
いかがでしたでしょうか。女性の社会進出がもてはやされた80年代には、専業主婦というのは時代遅れの生き方のようにも見なされがちでした。
しかし、家計や家族の健康を管理する専業主婦の仕事というのはけっして気楽なものではありません。もし「専業主婦のプロ」を極めようと思ったら、会社勤めの片手間でできるものではないのです。
高度成長時代にはどの家庭でも妻が専業主婦になる余裕もあったかもしれませんが、現在では十分な収入が得られるとは限りません。日本人の平均である年収400万円を稼いでいたとしても、子ども1人でまずまず、子ども2人では相当ギリギリの生活を覚悟しなければいけないとも言えます。
いくらブラック企業で働きたくないからと、安易に専業主婦になることはブラック企業以上に大変な道に足を踏み入れるきっかけになってしまうかもしれません。専業主婦になりたいならば、最低でも年収400万円の男性と結婚し、家計をやりくりする知恵と覚悟も必要です。
また、結婚前に十分な貯金を貯えておくようにしたいところです。気楽なイメージを持たれることも多かった専業主婦ですが、その実態は生易しいものではないということをおわかりいただけたでしょうか?
(文/木野きのこ)