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ADHDの原因と症状との付き合い方~環境調整と薬物療法について~

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ADHDの原因について

ADHDとは

そもそもADHDとは、Attention Deficit Hyperactivity Disorderの略で、日本では「注意欠如・多動性障害」と言われています。

年齢あるいは発達に不釣り合いな注意力、及び/又は衝動性、多動性を特徴とする障害で、社会的な活動や学業に支障をきたすものをいいます。

また、症状は7歳以前に現れ、その状態が継続し、中枢神経系に何らかの要因による機能不全があると推定されています。

実行機能の障害

実行機能とは、物ごとを論理的に考えたり、順序立てて考えたり、状況を把握して行動に移す思考や判断力のことです。

簡単に説明すると実行機能障害は「段取りの悪さ」といえると思います。ADHD者は定型発達者に比べて、

  • 前頭(ぜんとう)皮質(ひしつ)
  • 線条体(せんじょうたい)および前頭(ぜんとう)皮質(ひしつ)
  • 頭(とう)頂(ちょう)野(や)

の神経回路の活性が有意に低下していることが示されています。

中でも、前頭(ぜんとう)前野(ぜんや)の機能不全は広範囲にわたっていることがわかりました。また、基底核(きていかく)や頭(とう)頂(ちょう)皮質(ひしつ)でも有意な機能低下がみられました。

報酬系の障害

報酬系とは「意欲」、欲求を満たした時に「快」「満足感」の感情を生み出す脳部位で、こうした報酬獲得のために行動調整を行う回路です。

この障害を簡潔に述べるなら、「待つことができない」ことだと言えると思います。

定型発達者に比べ、側坐核(そくざかく)を含む腹側(ふくそく)線条体(せんじょうたい)の活性がADHD 群よりも有意に低下するという報告がなされています。

ADHDと小脳の成長

小脳はADHD にみられる抑制やタイミングのとれなさに関係しているといわれています。

ADHD 群では定型発達群に比べ、小児期では小脳、尾状核(びじょうかく)ともに容積が有意に小さいですが、尾状核(びじょうかく)は年齢とともにその差は消失しているのに対し、小脳容積の差はむしろ開いていることを指摘しています。

脳の発達が定型発達とは違うということですね。

様残な神経心理学的病態と発達的変化

ある論文では、概ね100例のADHD 児童の神経心理学的障害について検討しました。その結果、

  • 神経心理学的障害がないものが22例
  • 実行機能の障害があるものが16例
  • 報酬系の障害があるものが25例
  • 小脳機能の障害が疑われるものが34例

ありました。ADHD については、神経心理学的にみてもさまざまな神経心理学的異常が考えられるといえます。

さらに、脳構造の発達的変化、小児と成人の脳機能画像の結果を見ると、実行機能や報酬系に比べ、小脳機能の障害はむしろ顕著になっている可能性があり、小児期と大人の病態も必ずしも同一とは言えないと考えられます。

また、ドパミンは実行機能回路と報酬系回路に、ノルアドレナリンは実行機能回路と小脳機能に関与している可能性が高いと考えられていることからみると、薬剤への反応も患者によって、また小児と成人では異なる可能性があるのです。

薬物療法以外で行うADHDの特性改善

環境調整と療育

ADHDと診断された場合には、日常生活の環境の調整と行動変容や新しいスキル獲得を目指した療育が行われます。療育を行う対象は幼少期に診断・または定期健診で“要観察”とされた子どもです。

薬物療法以外の方法を行う最大の理由は、ADHD 治療薬は有効でありますが、原因治療ではないからです。それは、幼児期であっても成人期であっても変わりません。

ADHDや広汎性発達障害等を含む発達障害は環境と個人の持つ特性の相互作用によって、困難を生じています。ADHDの特性を持つ方が生活しやすいような環境を整えることは価値のある改善方法なのです。

ADHD者の生活環境の調整としては、勉強や仕事などに集中しないといけないときには、集中を妨げる刺激をできるだけ周囲からなくすようにします。

また、集中しないといけない時間は短めに、一度にこなさなければいけない量は少なめに設定し、休憩をとるタイミングをあらかじめ決めておくことも効果的です。

また幼児期の療育サービスでは、衝動性をコントロールするような指導や、集中力の持続時間を少しずつ伸ばしていく指導、先生や他者の話を注意して聞くようにするなどの学びの姿勢を獲得させる等、子ども一人一人の特性に合わせて様々なプログラムを行います。

ADHD児の場合、知的障害は無い子もいるものの、先生や大人の話を集中して聞くことが出来ないために、学習が遅れてしまうことや、衝動的に行動してしまいお友達と良好な関係が築けないといった問題がよく発生するためです。

障害受容~ありのままの個人をうけいれる~

そして、自閉症スペクトラム障害やその他の発達障害と同様、親をはじめとする家族がADHDに対する知識や理解を深め、本人の特性を理解し良好な関係性を築いていくことが、本人の自尊心を低下させることを防ぎ、自分を信じ、勉強や作業、社会生活への意欲を高めることにつながります。

発達障害のある子どもたちは、小さいころから褒められるよりも叱られる回数の方が多く、自分に自信を持てずに成長していくことがあります。

脳の機能不全のために適切な行動がとれなかったとしても、誰にも症状を分かってもらえず「自分はダメな人間だ」「何もできない」「誰ともうまく関われない」と自分を責めてしまい、将来的には、抑うつ症状等の二次障害を併発してしまうこともあります。

ですから、本人の“特性(特徴)”を認め、長所によりフォーカスして接するように心がけましょう。

ADHDに対する薬物療法

現在承認されているADHD 治療薬は、メチルフェニデート徐放錠とアトモキセチンがあります。

どちらも脳内の神経伝達物質であるノルアドレナリンやドーパミンの不足を改善する働きがあり、不注意が改善したり、衝動性を抑える等の効果が得られるとされています。

ADHDと診断された方の約7割に効果があるとされています。

持続時間、効果発現時間、依存リスク、流通制限などを考えて個人に合ったものを処方するべきですが、成人の場合、明確な指針がないのが現状です。また、保険適応の選択薬物は現在アトモキセチンとメチルフェニデート徐放錠しかありません。

どちらの薬剤も価格が高いため、継続して服薬するには経済的負担を考えなければなりません。

ADHDやその他の発達障害に対する薬物療法は原因治療には至らず、対処療法的な扱いに近いものとされています。しかし、大人のADHDの場合、薬物療法を中止するタイミングが難しく継続投与されている方が多いのも問題です。

大人のADHD の場合、特に何らかの生きづらさによって「不適応」になりクリニックを受診することが多いと思います。

それが本人の生来からの主観的な生きづらさからなのか、周囲のサポートシステムが家族の加齢などで弱ったため生きづらさが増したのか、転職での職種の変化や職場の人間関係の変化などで困難に陥ったのか等、その要因はいろいろだと考えます。

成人ADHD の薬物療法を考えた場合、ADHD者を取り巻く生活全般にわたる支援や介入と並行して考える必要があることが重要であると考えられます。

関連記事

大人のADHDの二次障害

先ほども触れたようにADHDは、特性が周囲の理解を得られないことや、自分の行動をコントロールできないことなどから、二次障害に陥るリスクを持った障害とされています。

二次障害とは抑うつ症状やパニック障害等を指します。

子供の頃はなんとか生きていくことが出来ていたけれど、大人になって症状が辛くなったり、生きにくさを感じたりした場合は、すぐに周囲に相談をしましょう。

周囲に相談できる人がいなかったら、心療内科や精神科、各都道府県に設置されている発達障碍者支援センターなどでも構いません。一人で悩まず、専門家を交えて具体的な改善方法を話し合いましょう。

おわりに

ADHDは個人の特性の一つであり、一生付き合っていかなければならないものですが、症状を軽くしたり、改善したりすることは可能です。ぜひ、前向きに専門家にご相談してみることをお勧めいたします。

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