毎年大勢の就職活動生が、希望する企業に入社するために奮闘する。思い思いの未来を築くための活動であるので、まさに必死だ。
しかし、そういう就活生にはしばしば、社会からの厳しい洗礼が待ち受けていることも少なくない。昨今では、圧迫面接と呼ばれる、尋常ではない意地悪な質問をしたり、大声で怒鳴ってストレス耐性をチェックするようなブラック面接を行う企業もあるようだ。
圧迫面接の実状に驚いた!
今回は、以前圧迫面接に直面した、26年度の新卒就活生に、体験したことをありのままに取材することに成功した。この就活生、Hくんの身に降りかかった災難。それはなんとも馬鹿げたものであった。
「面接開始から5分ほどは、和やかな雰囲気でした。集団面接でしたが、人事の担当者さんも穏やかで、僕も緊張せずに自分の言葉で面談をすることができました。
ところが、そのうち担当者さんが退席し、代わりに怖い顔のおっさんが入ってきたんです。おっさんはまず、自分が入室した際の挨拶がないことに激怒し、僕たちを起立させ、挨拶の練習をさせたのです」
おお、いきなり香ばしくなってきたではないか。しかし、本当の地獄はここからだ。
容赦ない圧迫面接に音を上げたHくん
この後、Hくんには納得できないシチュエーションが降りかかる。
「何度も大声を出しながら『おはようございます!』という発声練習をさせられました。訳が分からず従ったものの、面接を受けている中の1人は不服だったようで、声を出さず、仏頂面をしていました。
するとこのおっさんは、『全員が大声で挨拶するまで終わらないぞ、連帯責任だ』と、彼を脅しました。最終的には空気を読んで大声で挨拶をしてくれましたが、僕ら全員、モヤモヤとした気分になりました。
それからこのおっさんが面接を引き継ぎましたが、僕は突然の圧迫面接のスタートに驚き、緊張してしまい、しどろもどろになってしまって。
すると、僕の緊張している様子を見たおっさんに、「お前ノミの心臓だな」と罵倒され、そこで嫌になって面接を辞退し、退席しました。
当然その会社に入社することはできませんでしたが、僕としてはそれで良かったと思います」
面接の内容に辟易したHくん。とうとうたまりかねて、途中退席し、その会社に入ることはできなかったというのだ。
しかし、彼が言うように、僕もそれで良かったと思う。面接時点でストレス耐性をチェックするような趣向の仕掛けを用意する会社が、社員のことを大事に扱うとは到底思えない。
実際、Hくんがこの会社の評判を後々調べてみると、いわゆるブラック企業であることも発覚した。Hくん、まさに危機一髪で難を逃れた形である。
面接中途辞退した会社は残業地獄だった
なんでも、Hくんが入社を諦めた会社では、日々の残業は当たり前だという。というのも、同じ面接を受けた同期の友人が、そのまま入社してしまったのだ。
この同期曰く、毎日の残業のせいで、日給を時給で換算すると、800円にも満たないというのだから衝撃だ。同期はHくんに対して、「俺も面接の途中で帰ってればよかった」とボヤくのが常だという。
圧迫面接を乗り越えて採用されたと思ったら、残業や休日出勤、パワハラなどで疲弊している社会人も多いようだ。
今回紹介した事例のように、時給換算すると賃金はバイト以下というケースもあるようなので、そもそも圧迫面接する企業などろくでもないという認識を持つことも、大切なのかもしれない。
(文/松本ミゾレ)