バンドマン兼ライターの安藤です。
バンドマンのなかには、「エフェクターマニア」なる人種が存在します。エフェクターは、音楽にお金を払うことに理解を示すギタリストやベーシストにさえ、「なぜ、あんなオモチャに高いお金を払えるのかわからない」と言われることがあるシロモノです。今回は、ディープなエフェクターの世界についてご紹介します。
【この記事の目次】
エフェクターとは?
エフェクターとは、ギターやベースなどの楽器の音色に効果音(エフェクト)を加える機械です。演奏中は足元に置いて操作することが多いので、エフェクターペダルと呼ばれることもあります。主に、エレキギターまたはエレキベースに使いますが、普通に演奏する際は不要です。しかし、もっと印象的なサウンドにしたい場合、エフェクターを使い、ギターやベースの音を装飾します。
エフェクターを使った音楽を聴いてみよう
……と、言ってもイメージが湧かない人も多いはず。そこで、ロックの歴史とともにエフェクターの音色がわかる楽曲をいくつか紹介します。以下、『楽曲名』(アーティスト名/CDのリリース年度)としてお読みください。
エフェクターを使わないギターの音
Chuck Berry - Johnny B. Goode [HQ]
映画『バック・トゥ・ザ・フューチャー』でもこの曲が披露されるシーンがありました。まさに、ロックンロール誕生の瞬間とも言える楽曲ですが、エフェクターという概念がなく、ギターサウンドは何も加工されていません。
オーバードライブを使ったギターの音
『Smoke on the Water』(Deep Purple/1972年)
まさにエレキギターらしいサウンド。イントロの「ジャッ、ジャッ、ジャー」というサウンドは、オーバードライブというエフェクターで再現できます(恐らく、Deep Purpleは、エフェクターではなくギターアンプ側で歪ませていると思います)。
ファズを使ったギターの音
『(I Can’t Get No)Satisfaction』(The Rolling Stones/1965年)
未だにTVCMでも使われる有名曲。ファズというエフェクターを使い、「俺は全然満足できねーよ」という曲名どおり、イントロから不満げなサウンドを醸し出しています。
ディレイを使ったギターの音
『where the streets have no name』(U2/1987)
世界的ロックバンド、U2の代表曲。3:45~あたりで、歌の後ろで鳴っている不思議なギターのサウンドがお分かりいただけるでしょうか。音を遅らせる効果を持つディレイによって、ギターの音が詰まっているように感じられるのです。
ギターやベースの音の変化に興味がない人からすると、ささいな違いかもしれません。しかし、一部のプレイヤーは、「ささいな違い」に魂を込めて演奏しています。
エフェクターにかける金額の相場は?
少し熱くなってしまいましたが、多くのプレイヤーが想いを込めてエフェクターを踏んでいます。さて、本メディアはお金を扱う“HOW MATCH”なので、エフェクターとお金を絡めた話をしましょう。
Yahoo!知恵袋では、「エレキギター初心者ですが、エフェクターは何円のものを買えばよいか?」と投稿するユーザーがいました。これに対し、回答者の中には「初心者なら5,000円くらいのマルチエフェクターから買うのがよい」とコメントした人がいます。
マルチエフェクターとは、先程紹介したオーバードライブやディレイなど、何十種類ものエフェクターの音が入った機械です。一つの効果音しか出ないエフェクター(コンパクトエフェクター)を買うと1台で5,000円以上するため、音の変化を知るために購入するならお得だと言えます。
プロのミュージシャンでもエフェクターを使わない人もいます。つまり、エフェクターの費用はタダ。音楽ジャンルによりますが、たとえば、古い年代に生まれたロックやジャズは、エフェクターがなくても成り立つ楽曲も多いからです。せいぜい総額で10万円もあれば、今のプロギタリストが十分に納得できるエフェクターが購入できます。だから、エフェクターマニアの存在は、多くのプレイヤーから理解されないのです。
総額100万円超!?これが究極のエフェクターボードだ!
プロでもエフェクターにお金をかけない人がいる一方、エフェクターに命をかけるプレイヤーもいます。ここからは、my bloody valentine(以下、MBV)というロックバンドのギター&ボーカル、ケヴィン・シールズのエフェクターボードについてお話しましょう。
MBVとは、私(2016年現在28歳)が高校時代の頃から愛聴する、1990年代のロックバンドです。実は、私が今回エフェクターの話を、HOW MATCH上でお話する理由と言っても過言ではありません。
MBVはシューゲイザーという音楽ジャンルを開拓したバンドです。さらに、最近のトレンドであるポストロックや音響系を混ぜたハードコア・パンクなど、後進の音楽にも多大な影響を与えました。百聞は一見にしかず、まずはその音を聴いてみましょう。
『Only Shallow』(My Bloody Valentine/1991年)
冒頭から聴いたこともないようなサウンドが耳に飛び込んできませんか?実は、これはエフェクターを使い、いろいろと加工した上で作られたギターのサウンドです。
MBV、そしてシューゲイザーはあまりにも異質過ぎるので、音楽リスナーの中でも好みが分かれます。リスナーとしても、ニッチな音楽性であることは認めざるをえません。
さて、派手なエフェクトサウンドを堪能していただいたところで、MBVのギタリスト、ケヴィン・シールズの足元を見てみましょう。
(きになるおもちゃhttp://d.hatena.ne.jp/toy_love/20110705/1309798615より引用)
足元に転がる無数のエフェクター。実は、これは一部に過ぎず、まだたくさんあるそうです。確認できるだけでも『Dr. Scientist Tremolessence』(約30,000円)や『ROGER MAYER Voodoo-Vibe+』(約60,000円)と、高価なエフェクターがズラリと並んでいます。比較的廉価なBOSSという日本のメーカーのエフェクターも多く並んでいますが、市場価格を考えると、1台10,000円くらいはするはずです。
ちなみに、私の出身地である静岡が日本に誇るバンド、ASIAN KUNG-FU GENERATIONのギター&ボーカル後藤正文氏は、『ギタリストの使用機材を考える』というサイトを見る限り、エフェクター5個程度しか使用していないようです。代わりにギターやギターアンプ側にこだわっていそうですが、エフェクターの価格は10万円に満たない程度でしょう。
新車が一台購入できる金額に!?
MBVのケヴィン・シールズのエフェクターボードに入っているエフェクターの価格だけで、100万円前後になってしまうのではないでしょうか。さらに、彼は過去には定価10万円前後で販売されていたラックエフェクター(ビデオデッキくらいの大きさのプロ向けエフェクター)、SPX-90を使用していました。このことからも、エフェクターにかけている金額が想像できます。
さらに、彼の場合、1980年代頃から活動を続けています。時代とともにエフェクターを買い替え続けているでしょうから、これまでのエフェクターの購入費は数百万円以上、もしかしたら1000万円以上になっているかもしれません。それだけのお金があれば、メルセデス・ベンツやレクサスが一台購入できます。
恐らく、エフェクター好きのアマチュアミュージシャンは、生涯で100万円以上を使っていると思います。ハッキリ言って、たかが音です。しかし、エフェクターを多用するギタリストにとって命とも言えます。自分が納得するサウンドを出すために、お金を惜しむことは許されないのです。
求ム、理解者!
いかがでしたか?音にこだわるギタリストの世界、なかなか理解が難しいと思います。私もシューゲイザー寄りのギタリストなので、これだけのお金をかけることに対し、同業者からも共感が得られません。少しでも「エフェクターってイイな」と思った方は、ぜひ私と仲良くしてください!