2018年からマイナンバーが銀行口座に紐づけされる予定です。これに伴い、ばらばらの口座に預けている資産もまとめて把握されるようになります。マイナンバーと銀行口座が紐づくことによる影響について考えてみました。
本当に脱税対策?
マイナンバーと銀行口座の話題を聞くと脱税対策を思い浮かべる人が多いでしょうが、実はほかにも大きな理由があります。
政府は社会保障政策や税務執行を進めるうえで、国民がどれほどのお金を持っているのか把握しなければなりません。たとえば生活保護政策にしても、一般の人がどれだけお金を持っているかを知らなくては適正額が決められないというわけです。
これまではアンケートなどの手段で調査してきましたが、回答者は限られています。さらに、全ての回答者が正直に答えているとは限りません。銀行口座にマイナンバーを付けることで、正確な金額が把握できるようになるのです。
マイナンバーに対する不安
日本世論調査会が2015年12月に行った調査によると、国民の78%がマイナンバー制度に対して不安を感じているという結果が出ました。
理由の上位3つを見てみましょう。「個人情報の漏えい」が59.5%、「国による監視強化」が18.8%、「情報の不正利用による被害」が16.1%でした。
マイナンバーと銀行口座を結びつけることについては半数以上が反対していると言います。脱税などやましいことがなくても、自分の銀行口座が全て把握されていると思うとあまり良い気分ではありませんよね。資産状況がどこからか漏れて不正利用される可能性もゼロではないので、不安だという気持ちはよくわかります。
将来的にマイナンバーが記載された「個人カード」をキャッシュカードやクレジットカードとして使えるようにする、という構想についても84%が反対しています。
脱税はマイナンバーがなくても見破れる?
実はマイナンバーがなくても脱税はお見通しという説もあります。脱税者をわざと放置しておき、しばらくしてから税務調査に入ることで追徴金を多く得ようとする狙いがあるのだとか。
これはあくまで一説ですが、政府にとってマイナンバーがあれば管理が楽になるというのは間違いないでしょう。「マイナンバーですべての所得が把握される」という一種の脅しで、脱税を抑止する目的もあると考えられます。
隠し所得への課税が狙い?
マイナンバーの真の狙いは、所得隠しを見つけることだと言われています。実体のない会社の口座を作り、そこにお金を振り込んでもらうことで脱税をしている人がいます。これは最も悪質な脱税と言えるでしょう。今後はそうした口座にもマイナンバーが紐づけられる予定なので、所得隠しはほぼ不可能になります。
本当にマイナンバーと紐づくのか?
ここまで銀行口座とマイナンバーが完全に紐づいた場合の想定をしてきましたが、果たしてすべての口座にマイナンバーを紐づけることができるのかという根本的な問題もあります。世の中には無数の金融口座があることから、2018年までにすべての口座にマイナンバーが紐づくかどうかはまだわかりません。
新規開設についてはマイナンバーの提出を求められますが、すでにあるすべての口座にマイナンバーを付番することはかなり困難だと言われています。金融機関からマイナンバーを尋ねたとしても、全ての人が回答するとは思えません。すでに亡くなっている人や行方不明になっている人もいることでしょう。
マイナンバーを提出しなくても口座を使い続けられるとなれば、別に提出しなくてもいいと思ってしまう人も多いはずです。どのように対策していくのか、これからの動きに注目していきましょう。
まだまだ始まったばかりのマイナンバー制度。不安に思う人が多いのは、マイナンバーの本質がわかっていないという理由もあります。今後の行方を見守りたいところです。
(文/宮島ムー)