訪問販売のブラックなイメージ
「消防署の方から来ました(方角的に)」のフレーズでおなじみの訪問販売。2015年の消費者庁の調査では、実に96.2%の人が「訪問販売での勧誘を受けたくない」と回答している。
また、72.6%の人は「訪問販売は原則禁止すべき」と回答しており、業界がもつイメージは決して良いものとは言えない。
事実、訪問販売によるトラブルは多発しており、全国の消費生活センターには、訪問販売や電話勧誘に関する相談が毎年10万件あまり寄せられているのが現状だ。
また、この業界は大手転職サイトなどで一年中求人広告を出している業者も多いことから、離職率の高さがうかがわれブラック業界扱いされることも珍しくない。
実際どうなの?現役訪問販売業者にインタビュー
前述したように、とかくブラックなイメージが先行する訪問販売業界だが、実際のところはどうなのか?某地方都市で活躍する現役の訪問販売員であるMさんに内情をインタビューしてみた。
Mさんは入社4年目になる30歳の既婚男性で、社員数20名弱の訪問販売業者に勤務している。
Q.就職したきっかけは?
A.結婚です。大学を中退して個人経営の飲食店に勤めていたのですが、社会保険がちゃんとしていない店だったので、結婚を機に転職しました。
Q.年収は?
A.昨年は太陽光パネルの販売が好調で850万程でした。
Q.労働時間や休日は月にどれくらいですか?
A.4週8休ですが、前月にノルマを達成していないと連休はもらえません。お客さんの在宅率が高い土日祝日は出勤ですが、子どもの行事などがあれば休めます。労働時間は毎日8時~20時くらいです。もっと遅くなる場合もあります。毎年、年末年始の休みだけはしっかりもらえます。今年も12/29~1/7の10連休でした。
Q.残業代や歩合はどういう仕組みですか?
A.残業代はありません(苦笑)。その代わり、30,000円の営業手当が支給されています。歩合の仕組みは何パターンかあって、半期ごとに選べるようになっています。僕は利益をもとに計算してもらっているので同じ契約金額でも一件一件歩合が違ってくるのですが、契約金額の一律○%という歩合の社員もいます。
Q.どんな商材を扱っているんですか?
A.太陽光パネルやリフォームです。契約をとってきて資材を仕入れ、工事は外注に出します。訪問販売と言っても商材は業者によってバラバラですね。教材や健康食品を扱っている業者さんもいます。
Q.販売方法は?また、訪問販売のコツがあれば教えてください。
A.飛び込みがほとんどです。あとは販売したお客さんからの紹介。この2つで8割を占めます。チラシも配っていますがあまり反響はありません。半年前からローカルでテレビCMも打っていますが、まだ目に見える効果は出ていませんね。
販売のコツですか(笑)。やはりお客さんのニーズを読んで営業することです。例えば、台風が来たときは外壁に被害が出ることが多いので外壁塗装リフォームを、浸水被害があれば内装リフォームをと、臨機応変に営業しています。
Q.印象的なエピソードはありますか?
A.う~ん、社長を「社長」って呼んで怒られたことですかね(笑)。訪問販売の社長さんって、なぜか「会長」っていう肩書きの人が多いんですよ。うちの社長も肩書きは「会長」です。
入社当時、社長のことを「社長」って呼んでたんですけど、ある日「ちゃんと会長って呼べ!」と怒られました。以来、会長と呼んでます(笑)
Q.ぶっちゃけ、この業界ってブラックだと思いますか?
A.うちに関して言えば、ホワイトではないと思いますがブラックは言い過ぎかなと思います。休みや勤務時間に多少きついところはありますが、成果を出せばちゃんと歩合として返ってきますし。
あとは残業代さえ満額出れば言うことなしなんですが。ただ、飛び込み営業がほとんどなので合わない人にとってはキツいと思います。
Q.将来設計は?
A.独立して経営者になりたいと思っています。訪問販売にこだわりはないので飲食店でもなんでもいいのですが、とにかく人を雇って働いてもらって自分は働かずに収入を得たいですね(笑)。不動産で不労所得を得られれば一番理想的なのですが(笑)。
訪問販売の現状と今後について
度重なる特商法の改正に加え、社会的に進む消費者保護の徹底などにより、ここ数年で訪問販売業界は激変している。消費者保護に欠ける行為があったとみなされた業者は金融機関や大手メーカーとの取引が打ち切られる可能性も高く、顧客対応と、それに直結する社員への対応に関してコンプライアンス意識の向上が求められており、労働環境は徐々に改善されつつある。
また、太陽光パネルの販売がピークアウトを迎え、新たな商材の確保が求められる昨今、新たなビジネスチャンスが眠っている業界であることは確かである。
訪問販売業者に顧客を紹介してみよう!
リフォームなど利幅が大きい商材を取り扱っている業者に顧客を紹介すると紹介料をもらえる場合があるため、知人にそのような業者がいる人は意外な副業になるかも!?
(文/古川靖)