「契約社員」「アルバイト」「契約社員」といった非正規雇用。いつ頃からか非正規雇用が増加し、今では社会問題の1つにもなっていますね。非正規と呼ぶくらいですから正規雇用とは大きな違いがあり、その違いが正規雇用のメリットでもあります。
しかし先日、アメリカのニューヨーク州で最低賃金が1,800円(15ドル)に引き上げられました。1,800円といえば日本では一部の職業でしかあり得ない金額です。働き方によっては正社員を上回る給料になるでしょう。
このようにアメリカでは正規雇用と非正規雇用の賃金格差が埋まりつつあります。しかしこれは海外の話。日本の最低賃金に変化はあるのでしょうか。
日本の非正規雇用事情は劣悪
日本は先進国であり、衣食住の環境は先進国の中でもかなり整っているほうでしょう。月15万円くらい稼げれば贅沢はできなくとも不自由はありませんからね。
ところが日本の労働環境はたびたび問題になっています。特に海外と比較するとその違いが浮き彫りにするなります。基本的に正規雇用の賃金であれば他国との違いはありません。先進国の中では低いほうに入りますが、それでも特別低いというほどではないのです。
しかしこれが非正規雇用になると途端に悪くなります。先進国でも最低レベルといえるでしょう。実際、OECD参加国の中では最低です。
たしかに東京近郊であればそれなりに高いのかもしれません。2015年10月には最低賃金が引き上げられ、東京では907円になりましたからね。しかし一方で地方ではまだまだ低いのが現状です。沖縄では未だに600円台です。
このように日本の非正規雇用はかなり厳しい環境におかれています。
最低賃金はまだ上がるか?
とはいえ、日本でも最低賃金は徐々に上がってきています。全国平均で見てみると、2005年には668円だったことに対し、2014年では780円まで上がっています。9年で約100円ですから、微々たるものかもしれませんが、一応上がるには上がっているわけです。
また、最近も最低賃金の引き上げを訴えるデモが行われており、今後も徐々に上がっていくことが予想されます。今までと同じペースで上がるのであれば2020年頃には東京の最低賃金が1,000円になる可能性も少なくありません。
また、あまり知られていませんが一部有識者からも最低賃金を1,000円にするべきとの声が上がっており、最低賃金について頻繁に議論されているのも興味深いですね。
企業側の課題
ただ、簡単に最低賃金を上げられても困るのが企業です。人件費が増加するわけですから当然ですよね。そして企業側に影響が出れば、それは労働者側にも波及します。いわゆる人件費の削減ですね。
そして問題はまだあります。それは正規雇用と非正規雇用の格差がなくなることです。現時点では、正規雇用と非正規雇用に賃金格差があり、そのおかげで生産性を保っている部分もあるわけです。
しかし正規雇用と非正規雇用の格差がなくなると、正規雇用のメリットがなくなる可能性も出てきます。もちろんボーナスや福利厚生といった部分では正規雇用にメリットは残るはずですが、福利厚生の悪化や在宅ワークの活性化で非正規雇用のメリットが勝る可能性も少なくないわけです。
とはいえ、世界的な流れでは非正規雇用の賃金は上昇傾向にあります。むしろリスクが高い分、正規雇用より賃金を高くしている国さえあります。たしかにリスクが高いから高賃金というのは一理あると思います。
すでに格差が減っている?
今後正規雇用と非正規雇用の格差がどうなるのかは注視していきたい部分ですが、実はすでに格差は埋まりつつあります。たとえば、終身雇用。終身雇用は定年が設定されていて、かつ定年後に労働を必要としない環境があるからこそ意味があるものです。
しかし最近では嘱託社員として定年後も働く方も増えており、定年まで勤め上げたから安泰とは言えません。むしろ定年によるリタイヤ生活が危なくなるなら、手に職を持ったり、多種多様な職を経験してきた非正規雇用のほうが有利になる可能性すらあります。非正規雇用の強みは自ら選択できることにあり、将来を見据えたスキル習得が可能ですからね。
今はまだ正規雇用のメリットが大きいですが、今後非正規雇用の立場が変われば正規雇用が正解とは言えない状況になっているかもしれません。
どちらが正しいかを現時点で判断することはできませんが、どう転んでも対応できるような準備はしておきたいですね。
(文/kaztel)