「どこあるの?」「日本なの?」と言われることがある島根県。近年、出雲大社が全国的に知られるようになったり、今年の7月には松江城が国宝に指定されたりして、認知度は徐々に高まりつつありますが、まだまだ認知度が高いとは言えません。
上記のような言葉を聞くのはしばしばですし、おとなりの鳥取県と間違われることも往々にしてあります。そして、私はそんな無名県で生まれ育ったのです。
島根県にはいいところがたくさんあり、島根県のことをよく知らない人に心無い言葉をかけられたときには、きちんとその良さを伝えるようにしています。いずれは「島根県出身です」と伝えるだけで「あの島根県か!」「行ってみたい!」と言わせたいと思っていますが、ついにそれが実現しそうになってきました。
なんと「島根県松江市が日本でもっとも暮らしやすい」ことが公的に示されたのです。これを紹介せずして、何を紹介すればいいのでしょう。ちなみに、松江市とは島根県の県庁所在地のことで、ここがまさに私の地元だったりします。
全国1,741市区町村中のトップ!
2015年3月30日、経済産業省が「地域の生活コスト“見える化”システム」をリリースしました(以下見える化)。地域活性化の一環として、地方への移住・回帰の後押しをする目的で作成されたサービスです。
生活利便性、働きやすさ、教育、福祉、医療など、暮らしやすさの指標を「貨幣価値」に換算して全国の市区町村を表示でき、さらには地域別のランキングも知れる優れモノ。そこで全国トップになったのが、ほかでもない島根県松江市だったのです。
ただ、見える化には条件設定という機能があり、設定内容によってはランキングが変動します。例えば、松江市が1位になるのは30代~40代の郊外・農村志向で、夫婦と子供(小中高生)の世帯の場合。これを利便性志向に変更し、以下同条件にしただけでも、石川県の野々市市が1位になったりします。
つまり、ある一定条件下での1位というわけですが、トップになった事実は変わりません。
貨幣価値ってなんだ?
見える化が評価の指標として表示するのは、「貨幣価値」。島根県松江市は、年間“229万円”という数字で全国ナンバーワンを獲得しました。でも、貨幣価値っていったいなんなのでしょうか。
貨幣価値とはそもそも、商品およびサービスを購入する能力のことを指すようです。だから、島根県松江市は年間で約230万円のモノを購入する力がある、とも言えます。金額としては、さほど大きな金額でもありませんが、これが全国ナンバーワンの数字だと考えれば、もしかしてすごいことなのかもしれない――。
私は、島根県が230万円で購入できるモノとして、自治体のためになる選りすぐりの一品を考えてみました。そこでパッと思い浮かんだのは、鳥取スタンダードの「白バラコーヒー」でした。
おそらく山陰地方(島根・鳥取)の人しか知らないであろう、白バラコーヒー。大山乳業という鳥取県に構える農協が生産するコーヒー牛乳のことで、絶妙な甘みと優しい風味から多くのファンを抱えています。
この白バラコーヒー、山陰地方周辺でしか見かけないので、全国的な知名度はありませんが、どこからか「おいしい!」という口コミが広がり、最近では「幻のコーヒー」とか「伝説のコーヒー牛乳」とか呼ばれることもある模様です。正直、鳥取県を目の敵にする島根県民からすると、あまり喜べる話ではありません。
しかし、敵に塩を送ると言いますか、いつまでも争っていてはなりませんので、ここはひとつ県を挙げて白バラコーヒーを買ってあげようではありませんか。販売価格は、直営ネットショップで260円。230万円使えば、約9,000本も購入できる計算です。これで長い争いを終わりにしましょう。
意外と観光名所 暮らしやすい島根県松江市に足を運ぼう
島根県松江市は、国宝になった「松江城」をはじめとして、「日本の夕陽百選」にも選定された「宍道湖」、江戸時代の風景が残る城下町の「塩見縄手」など、見どころがたくさんあります。さらにあまり知られていませんが、日本三大菓子処として京都・金沢に並ぶ、和菓子文化が根付いた地域なんです。
暮らしやすさだけでなく、観光をするにもピッタリの松江市。「暮らしてほしい!」とはさすがに言いませんが、ぜひ一度は足を運んでいただきたいところです。とりあえず、名前だけでも覚えていただけるとうれしく思います。
(文/吉松京介・エストリンクス)