一口に税金対策といっても、様々な方法があります。個人型確定拠出年金や扶養控除などありますが、不動産投資という方法もあります。
ここでは、不動産投資という節税方法が、本当に有効な節税方法なのかという観点から検証してみました。
【この記事の目次】
不動産投資で節税できるって話・・・ホントなの?
まず、不動産投資が順調で、黒字で利益が出ている状態ですと、むしろ節税とはならず、不動産投資で出ている収益の分まで加味されて課税されます。
この場合、不動産投資がうまくいっているわけですから、全体としては喜ぶべき状態かもしれませんが、節税、というテーマからは外れた話となります。
次に、不動産投資で赤字が計上されている場合ですが、この場合は節税の効果はありますが、永続的なものではありません。それでは、不動産投資で赤字を計上している状態とはどういった状態を指すのでしょうか。
それは、お金の支出入ではなく、帳簿上の費用が、帳簿上の売上を上回っている状態を指し、減価償却費が鍵となります。
不動産投資の目的を間違わないこと
不動産投資とは、利益を得るためにアパートやマンションといった不動産に投資をすることです。
典型例としては、アパート・マンション等を購入し、賃貸物件として貸し出すことで家賃収入を得たり、購入物件の価値が上昇した時に売却し、その儲けで利益(売却益)を得ることを指します。
田舎の土地よりも、将来的に人口が集中して、住宅地として伸びしろのありそうな、東京などの都会に資金が集中する傾向があります。
不動産投資を行う上で注意すべきなのは、節税や値上がり率を目的とすると、長続きしないということです。
このような指標を元に物件を選んでしまうと、ついつい目先の利益に目がくらんだ物件選びをしてしまいがちです。そうではなく、不動産投資は、あくまで長期的に安定収入を得るために行うのだと心得ましょう。
不動産投資で想定しなければいけないリスク
不動産投資を行う際には、様々なリスクも伴います。以下に、代表的な種類を挙げて解説していきます。
まず、「空き室リスク」について。これは、自分が投資した不動産を賃貸物件としても、借り手が見つからず、賃料収入が得られないというリスクです。
次に、「借り上げ家賃の罠」について。
あなたがオーナーとなった賃貸アパートなどについて、不動産会社から「サブリース契約」を結ばないかと勧誘されることがあります。
サブリースとは、所有の賃貸住宅をサブリース会社に一括で借り上げてもらい、賃借人の立場にサブリース会社が入り、さらにその賃貸住宅が、サブリース会社から第三者に転貸され、第三者とサブリース会社が賃貸借契約を締結するという仕組みのスキームです。不動産の管理業務やメンテナンスなども、サブリース会社が請け負います。
そして、オーナーは第三者の賃借人から支払われる家賃から、サブリース会社に支払う管理費や手数料等を差し引いた、家賃の80〜90パーセント程度を手取り収入として受け取ります。
これだけだと悪くない話に聞こえるのですが、問題は、サブリース会社から家賃減額請求ができるという契約内容になっていることがほとんどだということです。
この場合、オーナーとしては到底納得できない家賃減額請求がなされ得るリスクがあるということを意味します。
最後に、「共有名義で不動産を所有している場合」について。
一般に、不動産は高額な買い物ですから、たとえば親族の誰かと資金を出し合って不動産を購入することもあるかもしれません。
こうした場合、不動産を共有名義で所有するということになるわけですが、ここで問題なのは、この先、当該不動産を売却したいと考えたとしても、他の共有者に承諾を得ないと、その不動産を売却できないということです。
このように、不動産について経済的自由が制約されるリスクというのも捉えておかなくてはいけません。
最後に、リスクというのとは少し違いますが、不動産投資をする上では、様々な税金がかかってくるのだということも、忘れてはいけません。
- 不動産購入時には、不動産取得税や登録免許税。
- 不動産保有中には、固定資産税や所得税、住民税。
- 不動産売却時には、譲渡税。
このように、不動産の所有ステージに従って、様々な形で課税されることになります。
家賃収入にかかる税金はいくらなのか?
不動産賃貸で得られた所得は、「不動産所得」として、課税対象となります。
サラリーマンの方で、不動産所得以外に給与所得もある方の場合は、給与所得と合わせて課税される「総合課税」方式が採用されています。所得税の課税率については、おおよそ下記のような形になります。
所得金額 | パーセンテージ |
1,950,000円以下 | 15パーセント |
1,950,000円超3,300,000万円以下 | 20パーセント |
3,300,000円超6,950,000円以下 | 30パーセント |
6,950,000円超9,000,000円以下 | 33パーセント |
9,000,000円超18,000,000円以下 | 43パーセント |
18,000,000円超40,000,000円以下 | 50パーセント |
40,000,000円超 | 55パーセント |
上記の税率を念頭に、具体的な所得税額の計算プロセスについて確認していきましょう。年収600万円のサラリーマンで、家賃収入が500万円、不動産の管理費や支払利息などの経費が400万円の方がいると仮定します。
まず、給与所得ですが、サラリーマンは年収から給与所得控除を差し引かれた額が給与所得として算出されます。年収600万円の場合は、
600万円×20%+54万円=174万円
が控除された額が給与所得となり、426万円という計算になります。
一方、不動産所得は、不動産収入から経費を差し引いたものになるので、
500万円-400万円=100万円
となります。ですので、これらの所得を合計した総所得金額は、
426万円+100万円=526万円
となります。ここから、基礎控除・社会保険料控除・配偶者控除等が差し引かれます。これらが126万円とすると、課税所得金額は
526万円-126万円=400万円
となります。この400万円に税率を適用すると、
400万円×30%=120万円
と計算され、これが税額となります。
確定申告の方法
サラリーマンの方が給与所得を得ている場合は、通常は源泉徴収で税金を納めていますので、確定申告は必要ありませんが、不動産所得を得ているとなると、確定申告も必要となってきます。具体的には、下記のようなステップを踏んで納税することになります。
手続きを初めてされる方などは、勝手がよくわからないことも多いでしょうから、まずは税理士に相談しながらやってみて、2年目以降、慣れたら自分だけでやってみるというのも良いかもしれません。
- 必要書類の収集
- 不動産の収支内訳書の作成
- 確定申告書の作成する
- 税務署へ確定申告書を提出する
- 納税or税金の還付
おわりに
このように、不動産投資はうまくいけば収益が得られるというメリットもあるわけですが、それに伴って納税義務や手続きなどの手間・リスクも抱えることになります。
一般に、不動産を購入するのは大きな買い物ですから、総合的に慎重に判断するようにしましょう。
不動産投資により節税できるのは、基本的には投資が赤字の場合であり、黒字の場合はむしろその分納税義務が発生します。
投資により得られる利益と、納税義務などのコストや空き室などのリスクを総合的に考えた上で、不動産投資をするかどうかを慎重に判断することが大切です。
まとめ
- 不動産投資の目的は節税ではなく利益を出すこと
- 不動産投資で利益が出たら、節税というよりも、不動産収益分を加味した納税義務が発生する
- 不動産投資には様々なリスクが伴うので、あらかじめ対処法を想定しなければならない
- 納税する場合はサラリーマンも確定申告が必要
(文/tdom)