人生は一定の年齢にいたるまでどんどん必要なお金が増えています。子どもが生まれたりと目に見える必要がなければ大丈夫と考えているかもしれませんが、それは違います。
大人になると、年齢に合わせて『カッコをつける』からです。人間には競争心というのが備わっています。「隣の芝は青い」ということわざにある通り、人間は常に競争しているのです。
「おいしい食べ物を食べたい」「たくさん旅行したい」、「いい車を持ちたい」「いい家に暮らしたい」。つねに人は上を目指し、そのためにお金はどんどん必要になっていきます。
今回例にあげるのは非正規雇用と正規雇用の格差です。日本の成人には『勤労の義務』がありますが、どのように勤労し、更に納税していくかは個人の自由です。社会に出た20代に、明確な差が生まれてくるのはそれから10年以上たってからです。
収入の変化は目前に。年を取ってからでは遅い
2012年度の厚生労働省の調査によると日本全体の世帯所得は平均約550万円。少数派の高所得世帯が平均値を引き上げているので、中央値は約430万円、こちらの方が実態に合っています。
20代の平均年収は300万円前後です。このときはまだ非正規雇用、バリバリ働けているフリーターの方が手取りが良かったりして、「これはすぐに平均を超えられるな」と日本の平均収入を見て思うかもしれません。
また、上司や先輩社員との関係に悩み、休みの少なさに嘆き、毎日愚痴っている正規雇用の友人を見て、「年収が同じ、むしろ高い?なら、しがらみがなくってコッチの方が楽」と思っているかもしれません。
そう思えるのは20代、せいぜい30代の前半までです。非正規雇用は定期昇給がなく、ずっと給与は変わらないのです。いいえ、それよりももっと若い労働力が入ってくれば取って代わられ仕事は激減し、あわせて収入も激減してしまいます。
そうです、『しがらみ』というのはある程度の保障になるのです。1つは定期昇給、愚痴りながらも年齢や努力を重ねることで昇給します。もう1つは理由なく馘首(クビ)できないこと。正規雇用の社員は「会社がつぶれるかも」と思うことはあっても、「クビになるかも」と思っている人はあまりいません。
更に収入や職の安定は、結婚したり子供を育てたりするときの土台になります。「どうなるか分からない」という不安定な土台は年を重ねると脆くなり不安と背中合わせになってしまいます。
10年後には新中間層が貧困層へシフトチェンジか?
現在の所得階層は、
- 年収が1000円万以上の富裕層が約11%
- 1000万円未満501万円以上旧中間層が約31%
- 200万円以上500万円未満の新中間層が約37%
- 年収199万円未満の貧困層が約20%
となっています。
ここで注目するべきなのは「新中間層」。ここには若手サラリーマンと稼いでいる非正規社員(派遣・契約社員)、健康的なフリーターが当てはまります。若手の正規雇用者員は前述した通り、10年ほど努力すれば一つ上の階層、年収501万円以上の旧中間層に行けます。
それ以外の新中間層はそのまま新中間層に留まるか、稼げなくなったら貧困層に落ちてしまいます。貧困層の場合、親からの仕送りや社会保障があるから生活していくことができます。
但し正規社員だから安心というわけではありません。ワーキングプアという言葉がある通り、旧中間層は働いてもお金が増えない階層でもあります。なぜならば現在日本を動かす税金や社会保障費の大部分を負担しているのは富裕層と旧中間層なのです。
新中間層は相対的にこれらの負担が軽く、さらに貧困層は全く負担がなく受益のみです。新中間層で居続けることは努力を伴い、高齢化や少子化など社会背景を鑑みると負担はどんどん重くなっていきます。
今後は新中間層から旧中間層へ、旧中間層から貧困層へとシフトチェンジが起こり、10年後の階層比率は
- 富裕層が10%
- 旧中間層が20%
- 新中間層が40%
- 貧困層が30%
になると予想されます。
富裕層は10%をキープ。固定化する富裕層
旧中間層から新中間層へ、新中間層から貧困層へ、それぞれシフトチェンジして下の階層の比率が増える予想に対し、富裕層は10%をキープしています。なぜ富裕層だけ固定できるのか、その理由は「教育」にあります。
そもそも富裕層には官僚・政治家・医師・弁護士・大物タレント・大企業役員などが挙げられて、富裕層は子育てに対してお金の心配がなく、ほとんどの世帯が子どもを持てます。
彼らは子どもの教育に潤沢な資金をあてることができ、私立の中高一貫に通わせ、一流塾に通わせ、留学させ、ワールドワイドで戦える次世代を作り上げていきます。自然と彼らの子ども(次世代)は年収の高い仕事に就きます。富裕層は富裕層を生むのです。
「教育」が日本の社会を崩壊から守る
富裕層以外の階層は子育ても大変です。特に子どもを産んで育てている世帯が多い20代後半から30代の世帯は、女性も仕事をして税金や社会保障費を納めています。
政府の高齢化対策、さらに少子化対策で子どもも増やして欲しいという要望に対して「無理!!」と声を大にして言いたいはずです。
女性の社会進出を政府が支援するのも未だスタート段階で、産休・育休制度や保育所の問題など整えなければいけないことはたくさんあります。この取り組みがうまくいくのか、子どもが増えるかどうか、その子どもがどのような社会を作っていくのか、全て20年ほど経って分かることです。
日本の次の時代が良い時代になるためには、子どもたちに十分な教育を与えられる必要があります。将来の有能な勤労者を生み出し育てることで国民1人1人の生産性があがり、国は税金で潤いより良い国家に成長していくことに繋がります。
しかし現在の日本では、公教育支出のGDP比が世界で見ても最低レベルです。日本では子どもの教育に親がお金を出す必要があり、前述したとおり、親の収入によって子どもの教育水準および職業が決まってしまいます。「子どもの教育をどのように、格差なく行っていくか」、国民1人1人が真剣に考え取り組んでいくことが必要です。
(文/高橋亮)