趣味というものは、人生をより深みのあるものにしてくれる。
趣味を持たない人の人生は、往々にしてクソほど味気ない。
大体趣味のない人って、真面目か、趣味にすら本腰を入れられない半端者のどちらかだ。
国民よ、趣味を持とう。
ただ、趣味を持つことは大事ではあるけど、その趣味に傾倒しすぎるのも考え物なのかもしれない。
行きすぎたマニアって、ホント、お金に糸目をつけなくなるから。
音にこだわるマニアが教えてくれた“その道”への入り口
僕の周囲に、オーディオマニアと呼ばれる、音の質に異様にこだわる知人がいる。愛用のヘッドフォンにも、数十万も使ってしまっている。
もったいない。
なんとも、もったいない。
そう思って率直に「しょせん音じゃないか」と言ったことがある。
すると彼は怒りもせず、「まあ、ちょっとこれを着けてみろ」とヘッドフォンを僕に勧めてきた。
「普通の安物とは音の響きが全く違う」と言われてはいたが、確かに聞き比べると雲泥とは行かずとも、かなり音質に迫力が出ていたように感じた。
こういうのはまさに趣味の極地。
突き詰めようと思えば思うだけ、魔境に足を踏み入れるようなものだ。
良い物は確かに素人ですら違いが分かるわけだし、お金をつぎ込む気持ちも分からないこともない。
マニアは投資に際限なし!全体の25%が100万以上投資!
さて、ここでちょっと紹介したい調査データがある。
東京マルチメディア放送株式会社は先日、アナログレコードを聴いていて、なおかつ「音質の良さ」に魅力を感じている16歳以上の男女100名を対象に、実態調査を行った。
色々とこの手のマニアにまつわる調査結果が開示されているんだけど、際立って目に付くのが、投資額だ。
もっとも多かったのが「100,000円以上300,000円未満」となっており、これが全体の25.6%となっている。
どんな趣味であっても、まあビギナーでもこのぐらいは投資する人はいるものだ。
しかし、この25.6%に迫る勢いだったのが、投資額は「1,000,000円以上」という回答で、24.5%だったのだ。
おおよそ4人に1人が、この界隈では大台の1,000,000円以上の投資を惜しんでいなかったということになる。
「とかくこの手のマニアは、周囲の人々に理解されにくい」とは、前項で登場した僕の知人の談。
だけど、趣味ってそもそもそういうものだし、良い音質を追及する以上、お金というものをドンドン使うという姿勢は、マニアにとっては当たり前のことだったりする。
以前この手のマニアのアンケート調査結果を見ることもできたが、おおよそ25%は100万以上投資をするようだ。
耳だけが頼りの趣味にここまで突っ走れるのもひとつの贅沢の形ではないかと思うので、否定というより肯定の形でコラムを書いてみよう。
ホンモノのマニア、そのこだわりは常人には理解不能
そういえば、以前新聞でアナログレコードの熱烈なマニアの寄稿を読んだことがあった。
たしか彼の場合、一流の機材を取り揃えた上でも、まだ音質に納得ができていなかった。
その原因は、自分の住んでいる家の間取りにあると考え、とうとう新しいマイホームを建築したのだ。
しかも、音響機器を設置する部屋は、完全に自分が監修する形で、業者にあれやこれやと注文をしていった。
費用はウン千万にも上ったが、これによってこの人物は、最高の音響機器が、最高の環境で、最高のパフォーマンスを発揮できるシチュエーションを作り出すことに成功したのだ。
普通の人ならドン引きすることだろうが、こういうマニアにとってはまさにすばらしい投資になるのだろう。
そういえば僕も怪獣フィギュアのマニアだが、やっぱり手に入れるだけではつまらなく感じて、特注のケースを用意して部屋中にディスプレイしている。
費用は……思い出したくもないが、まあ、そこそこ、新車が買えるぐらいだろうか。
(文/松本ミゾレ)