つまらない邦画が増えている。そう思ったことはないだろうか。
日本の映画は、良質な原作を下敷きに、全く見当違いのストーリー改悪、話題性ありきのキャスティング、製作委員会を組織し、テレビ局の意向が反映されまくった末に完成するものが少なくない。
さらには視聴率の良かった人気ドラマを劇場版として公開するということもあるが、その内容は「別にドラマのスペシャル版で良くない?」と思えるものばかり。邦画公開と同時に放映されるTVCMも一辺倒だ。
「○○、最高!」や「超おもしろかった!」など、先行試写会かなにかで先に作品を観た一般客の感想を述べさせるシーンが挿入されることばかり。毎度毎度思う。「誰かも分からないようなお前らの意見は一切興味がない」と。
まるで金太郎飴のように型どおりのスタイルで作られる邦画に、とにかく僕はうんざりしている。
高い!長い!つまらない!
昨年、三谷幸喜作品の最新作「ギャラクシー街道」を観に行った。本当ならこんなのを観たいとは思っていなかったが、まあ付き合いで仕方なくといった感じだ。1時間50分の上映時間は、まあとにかく長いだけ。
荒唐無稽なコメディ要素がウリの作品とは言うものの、それだけといった感じで、新鮮さは皆無だった。というか、初見なら新鮮に思えたはずの要素は、全て事前にテレビ番組が特集して、ご丁寧に紹介し尽していた。
何にも感動がないし、いつもの三谷キャストにも新鮮味はないし、何よりギャグ要素で笑えないのがつらすぎた。この作品は世間でも酷評されまくっているが、考えてみればオリジナル作品というだけ、まだマシである。
この辺は実績のある三谷監督だからこそ、許されたものだろう。考えてみれば小説、アニメ、漫画といったものを無理やり実写映画化して失敗している邦画なんか腐るほどある。
「ガッチャマン」や「進撃の巨人」などが記憶に新しい。VFXをウリにしていながら、キャストが人気タレントのゴリ押しというケースがよく該当するのがこの手の作品の特徴だ。
どちらもレンタルDVDで視聴したが、つくづく映画館で観ていなくて良かった。
こういう作品は、山田風太郎原作の「甲賀忍法帖」を大胆に改悪した「SHINOBI」というクソ映画を劇場で観てしまい、あまりの残念なでき栄えに座席に座ったまま気絶していた経験があるから、意図的に避けるようになってしまった。
邦画は誰のためにあるのか?
いち映画ファンとして、僕は映画というものに対しては、送り手のこだわりが感じられて、それが観た人にも伝わる物でないと愛されないという自論を持っている。だけど現実にはどうだろうか。
テレビドラマはスポンサーのためのもの。舞台は役者のためのもの。映画は映画監督のもの。こういう不文律が、今では崩れてしまっているように思えるのだ。映画も商売である以上、監督のこだわりだけでは公開できないのは重々承知しているが、それにしたって監督の意思が感じられない作品が多すぎる。
というか、監督があまりにこだわりを強調しすぎると、日本の同調社会の悪いところが滲み出て、この監督を追放しようという動きすら起きてしまう映画ファンなら、誰のことを言っているかお分かりいただけるはずだ。
なんのことはない。野心的なこの監督は邦画界に見捨てられたものの、今ではハリウッド作品にも深く関与するようになった。つまらない作品を作ってでもその場限りの収益を上げようとして、駄作を送り出す邦画界。
その邦画界への不満は年々消費者の心の中に蓄積していき、今では「邦画wwwww」という反応を見せる者まで現れるようになった。無理もない。ドラマで十分なクオリティの作品を、わざわざスクリーンで観ようと思う人はそう多くはいないのだから。
ましてドラマも映画も、登場している役者はほとんど変わらないのだから、固定のファン以外に訴求力なんかない。テーマソングを若者に人気の歌手が担当する。誰と誰が主役。そういうことばかりが宣伝されて、肝心の映画の本質が薄っぺらいのだからたまらない。
1,800円は大金。茶番には付き合えない!
一応邦画にも様々なジャンルがあって、その中には無難に面白いものや、一度観たら忘れられないような作品もあるにはある。
だけど、公開前にマスコミで大騒ぎで宣伝して、つまらないものを1,800円で見せるような真似をしているから、結果的にぼったくりと思えるような状況になってはいないだろうか?
つまらないものを宣伝した責任は誰もとらない。そんな映画を掴まされた観客の財布から金がなくなるだけで完結している。これは健全とは言えない。
もっと言うと、洋画を日本で公開する際にも、「よくもこんな台無しな方法を思いつくもんだ」と呆れることしきりだ。
せっかくの大作を吹き替えキャストにタレントを起用してしまったり、字幕が明らかに誤訳となったままチェックもされずに封切りとなっていたり、最悪なのが主題歌が日本人というケースだ。雰囲気もクソもない。
まだ内容がしっかりしている作品が多いだけマシだけど、余計な一手間で作品を食えないものにするのはやめてほしい。今の日本の映画界には、映画のことを好きな人間が関与していないんじゃないかと、本気で疑ってしまう。
1,800円は大金だ。使った後に嫌な思いをするような作品があまりに多いと、消費者だって映画館から足が遠のくだろう。
(文/松本ミゾレ)