【この記事の目次】
若者の貧困と、女性の生き方に切り込む
僕は好きな時間に好きなテーマで好きなようにコラムを書いて生活している物書きだ。でも自分が書きたいと思うような内容が、いつもどこかの媒体に掲載されるというわけでもない。
ときには色んな方面からの横槍が入ってお蔵入りになったり、掲載後に物言いが入って、泣く泣く取り下げたテーマもある。特に若者の貧困と、女性の生き方についてのテーマが合致したものを送り出そうとすると、これがなかなかどうして実現化しにくい。
でもせっかく取材までして結果を出さないのも物書きとして不誠実。そこで今回は、テーマを極小さな範囲に絞ってみた。タイトルのとおり、現役女子大生で風俗嬢の女の子に取材したときの話をしたい。
あわせて読みたい
何故彼女は風俗で働く道を選択したのか?
日本は非常に暮らしやすい国だ。犯罪もそう多くないし、差別もあるにはあるけど、他国のそれに比べるとかなりマイルドだ。ただ、それでも貧困層の出身の人だっている。
僕が取材した女の子は、20歳そこそこながら学費を捻出するために仕方なく風俗に身を落とした。理由は進学するために勉強はしたものの、家にはほとんどお金がなかったからだという。
そもそも彼女は学生時代から幾つかのアルバイトを経験していたというのだが、大学に進学するにはどうしたって学生バイトで賄えないほどのお金がかかる。勉強するために大金が必要になるということについてはさまざまな論議もあるけど、ここではひとまずそれは置いておきたい。
ともかく、勉強をする自由を妨げる現実が家庭によっては今も存在しているのである。
世の中、結局はお金さえあれば、大抵の障害は排除できる。生まれつき裕福な人間はこれが分からない。底辺に蠢く貧民の苦しみが分からない。
貧乏な家の出だからこそお金で苦しむ人が分かる
脱線するが、僕も随分貧乏な家の出だ。母親が借金をし、家族揃って雑草を湯がいたり、川で捕まえた魚を食って凌いだ時期もある。周囲には「乞食」と罵られもした。
だからこそ、お金のないことで苦しむ人の気持ちがよく分かる。彼女もまた、のっぴきならない家庭の事情もあって援助も得られず、それでも自分の将来を見据えた末に風俗で働くという選択をしたそうだ。幸いスタイルも悪くない。
すぐにリピーターも増えたそうだ。
勉学のため、体を張って稼ぐたくましさ!
風俗で働いている人の話になると、よく言われるのが金銭感覚が麻痺するという話題。これまで学生でもできるアルバイトしかしたことのなかった彼女にとっては、確かに支払われる報酬ギャップは凄まじいものがあったそうだ。
しかし彼女は正気を失わなかった。
何故なら、その高額な報酬ですら、大学に通うためには最低限必要なラインの数字だったからである。現実として、日本はそこそこの大学に入ろうという場合には、信じられないほどの費用が発生する。そしてその費用を自分の稼ぎから捻出する学生は極稀だ。
ところが彼女は真摯に学び、そのための風俗として割り切って暮らしていた。月におよそ400,000円ほど稼ぎ、半分は貯蓄や水道光熱費に。そしてもう半分を学費に当てている。
彼女のこの血の滲むような努力の上に成り立つ学生生活は、まだ続いている。最近は随分要領も分かっていたということだが、慢性的な睡眠不足だけはどうにもならないそうだ。
ただ、自分の力で稼いだお金で通うわけだから、大学の講義では意地でも眠らないそうだ。彼女の執念が窺える。
学ぶに学べない、働くに働けない社会
ご存知のように、日本では依然として学歴偏重社会だ。建前では誰しもがチャンスを得られるように見せかけてるけど、実際にはそんなことはない。
どんなに素晴らしい人間性を持つ人でも、中卒、高卒では生涯年収が低くなる。一方で親の資産から学費を捻出され、大学を出た人間の生涯年収は、貧乏のせいで苦労した家庭を出た者よりも高くなりがち。
これは不公平な話だけど、そもそも人間なんて最初から不公平を強いられる生き物。お金の有無、顔の美醜がその後の人生を大きく左右する。抗おうと思ったら、今回紹介した彼女のように、それなりの覚悟を決めなければいけない。
日本の多くの企業は、学歴を重視する。端的に言えば、学べないということは、良い企業に入ることも叶わないということ。お金は生き方の明暗を分ける。
(文/松本ミゾレ)