現代の日本では年々生活保護受給者が増え続けています。
平成28年度に厚生労働省が発表した平成26年度の被保護者調査では生活保護を受給している世帯の数は過去最高となっており、不況の影響もあって今後も生活保護を受給する人の数は増えると予想されています。
では生活保護を受ける人はどんな事情があるのでしょうか。また生活保護を受けるための条件はどのようになっているのか気になる人もいるのではないでしょうか。中には大きな誤解をしている人もいると思いますし、こういった誤解を生んでいるのが不正受給です。
今回は生活保護について正確な知識を身につけながら、生活保護受給者の貯金という問題に着目してみましょう。
生活保護を受けているのはどんな人?
生活保護受給資格
生活保護受給資格とは生活保護を受けるための条件が揃っている人のことです。生活保護を受けるために申請をする際に生活保護を受けることができるかどうかのポイントが4つあります。
ポイント1 資産を持っているのか?
土地を所有している場合や貯金を持っている場合は生活保護を受給することはできません。
生活保護を受けなければならない状況として考えられるのは土地も売却してしまい、貯金も底をついているという状況でなければならないので基本的には持ち家の場合や車を所有している場合も生活保護を受けることはできません。
ポイント2 収入がどれくらいあるのか?
生活保護の受給を決める際にその人にどのくらいの収入があるのかがひとつのポイントとなります。
収入には児童手当や年金、離婚した場合の養育費なども含み、給与などの収入とこれらの収入を合わせた合計額を、厚生労働省が定める最低生活費の基準額を下回っていれば生活保護を受給する資格を得ることができます。
最低生活費は憲法で最低限の生活を営むために必要とされているお金のことであり、健康で文化的な生活を送るために必要な最低限度額を指しています。
最低生活費は一括で決められているわけではなく単身なのか家族がいるのか、年齢や住んでいる場所などを考慮して決定され、最低生活費で賄う項目としては食費や日用品代、光熱費や衣料費など生活扶助と呼ばれるものです。
ポイント3 親や子ども、その他の親族で頼れる人はいないのか?
生活保護の受給申請をした場合に確認されるのが親や子ども、その他の親族など3親等以内の親族に対して援助ができるかどうかです。これを扶養照会といい、もし親類に援助が可能な人がいる場合には生活保護を受けることはできません。
例えば一緒に住んでいる家族がいる場合にその人に十分な収入がある場合には生活保護を受けることはできないのです。
ポイント4 本当に働けないのか?
何らかの事情によって働くことができずに生活費を捻出することができないことから生活保護を申請するのですが、例えばただ単に無職であり求職活動中という場合は受給することはできませんし、働ける可能性がある場合も受給することはできません。
生活保護を受給する条件としてはどうしようもない事情によって働くことができない場合です。
どんな人が生活保護を受給しているの?
4つの条件をもとに生活保護の受給資格を得ることができるのですが、近年で最も生活保護受給をしている世帯として目立つのが高齢者世帯です。
生活保護受給者を年齢別に見てみると60歳以上が50%を占めており、高齢になることで働くことができないことが大きな理由となっています。またこの他には障害や病気、ケガのために働くことができない障害者、傷病者世帯や母子家庭です。
母子家庭の場合は10代から20代の年齢も比較的多くなっています。
増えている不正受給
生活保護は最低限度の人間の生活を保障するために存在しているので、目的以外の用途で使用することはできません。目的以外の用途で使用することで不正受給となり、最悪の場合には生活保護の打ち切りやこれまで支給された保護費を返還しなければならなくなってしまいます。
不正受給にあたるものとしては
- 生活保護費を借金返済に充てる
- ギャンブルの費用に充てる
- 貯金に回す
- 家賃の上限を守らない
などです。この他には働いているのに生活保護を不正に受給しているケースやタンス預金などで貯金を持っていながら不正に受給しているケースもあり匿名の通報などによって明るみになっています。
生活保護受給には制限がいっぱい
生活保護を受ける上でかかる制限とは
生活保護は必要最低限の生活を保障するものとなるのでギャンブルや借金の返済などに充てることはできません。
国民の税金から賄われている生活保護費をパチンコなどのギャンブルに使うというのは近年でも問題になっているのですが基本的にはNGですし、生活保護の受給申請をする際に借金がある場合にはまず法テラスを利用して債務整理を行う必要があります。ですから生活保護を受けている最中でも借金をすることはできません。
この他には生活保護を受けるためには車の所有や住宅の所有などは認められないので生活保護を受ける以上は諦めなければなりません。
毎月収入を報告しなければならない
生活保護を受けている以上、毎月の収入を報告するのは義務となります。ギャンブルや懸賞などで得たお金も収入とみなされるので報告する必要があります。
収入があったのにないことにしていると不正受給と判断されて生活保護が打ち切りになることもあります。
生活保護でも貯金は何円までならできるのか
生活保護受給者は貯金ができないの?
貯金がないことが生活保護を受けるひとつの条件となります。ですから生活保護の受給がスタートした時点では貯金は0円のはずです。
晴れて生活保護を受給することができるようになり、毎日生活をしていると切り詰めることで貯金に回すことができ余裕を持って生活できるのでは?と考えるのですが、基本的に生活保護費を貯金に回すことはできません。
最低限の生活を保障するのが生活保護となるので貯金どころではないというのが憲法の考えです。ですから基本的には生活保護を受給している人が貯金をするということはできませんし、生活保護を受給している人は銀行の預貯金も役場などの福祉課にある専門の調査部隊が調べているので簡単にごまかすことはできないようになっています。
しっかりとした理由があれば生活保護でも貯金は認められる
日々の生活に不安があるから、ギャンブルで大きく賭けて一発逆転したいから、欲しいブランドのバッグがあるから、海外旅行に行きたいからという理由で貯金をしている人もいるでしょう。
ですがこういった理由では生活保護を受給している人の貯金は認められません。
ですが中には生活保護を受給していても貯金を認められる理由もあります。例えば
- 子どもの将来の学費のため
- 将来のお墓の購入資金のため
などです。
生活保護受給者はいくらまで貯金をすることができるの?
生活保護を受給している人は貯金額に上限があります。
基本的には生活保護基準の6ヶ月分以内と言われており、例えば毎月15万円の生活保護をもらっている場合には
15万円×6ヶ月=90万
が貯金の最高額になります。
これを超える場合には生活をする上で足りないものの購入を役所から催促されたり、最悪の場合には生活保護の打ち切りや生活保護の返還を求められたりすることもあります。
生活保護を受給していても貯金が認められるケースはあり、ケースワーカーや福祉課などに相談することで上に挙げた以外にも貯金の理由として認められるケースはあります。
(文/中村葵)
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